ファルコン2000によるタンク底板探傷

ファルコン2000低周波電磁誘導法によるタンク底板探傷

◎概要

ファルコン2000はタンク底板や配管の腐食減肉を検出するために開発された装置です。低周波電磁誘導法(LFET)という技術に基づいており、漏洩の危険性が高い局部腐食減肉の検出に優れております。特に、タンク底板は外部から侵入する雨水の影響で底板裏面に腐食減肉が発生することがあり、それが原因で漏洩に繋がります。従来の超音波探傷ではこの局部腐食減肉を見落とす恐れがありましたが、ファルコン2000はそれらを明瞭に検出する能力を有しております。また検査対象面を非接触で走査するので塗装やコーティング、錆や汚れが存在していても問題なく探傷できます。数多くの特長を兼ね備えており、ユーザーから高い評価を得ております。

◎原理

低周波電磁誘導法(LFET)とは磁化コイルから低い周波数(5~27Hz)を鋼板に与えます。減肉があった場合、交流磁束の流れに変化が生じ、その変化を検出コイルでピックアップする検査方法です。通常の渦流探傷と異なり低い周波数を使用することで検査対象物全体の磁場の浸透がより均等になり、表面だけでなく裏面の減肉も検出することが可能になります。

◎検査仕様

対象配管材質カーボンスチール
適用板厚~12mm
探傷幅300mm/1走査(Sr.スキャナー)
作業量約40m2/日(タンク底板)
接触媒質不要
位置検出精度±5mm
コーティング厚さ0~5mmまで探傷可能(種類不問)
検出限界減肉率20%の密集減肉 Φ3貫通孔
装置重量探傷器本体・・・3kg Sr.スキャナー・・・10kg Jr.スキャナー・・・3kg
センサーコイル64個・32チャンネル(Sr.スキャナー)
使用電源AC100V/220V(バッテリーも可能)

◎特徴

1.全面探傷が可能

磁場が全体に広がることによりセンサー間のブラインドスポットがなく減肉の見落としがない。

2.局部減肉の検出能力が高い

局部減肉と残肉値の小さい減肉は磁束の変化が顕著であるので、それら漏洩の危険性の高い減肉を明瞭に検出できる。漏洩を未然に防止することが可能。

3.介在物の影響を受けない

介在物が存在していても磁束の流れに影響を及ぼさない。介在物を減肉と誤判断することはない。

4.表面状態の影響が少ない

非接触探傷なのでコーティング上からの探傷も可能。接触媒体が不要。

5.溶接線近傍の探傷が可能

減肉とノイズをリアルタイムで判別できるので冶具跡ノイズ信号の多い溶接線近傍も探傷が可能。

◎探傷状況

◎キャリブレーション用試験片による探傷資料

キャリブレーション用試験片(元厚t=6.0mm)を表面側からファルコン2000で探傷した資料です。裏面には減肉が機械加工されています。サイズはφ10、φ20、φ30、φ40、減肉率が30%、50%、70%、100%です。ファルコンの特性・能力が確認できるように検出信号を表とグラフにまとめました。

○スキャナー
 ファルコンシニア
○試験条件
 周波数8Hz ゲイン:15 レベル:High 
 ギャップ:2mm
○試験片
 t=6.0mm
 減肉径:φ10、φ20、φ30、φ40
 減肉率:30%、50%、70%、100%
表面側からの探傷
キャリブレーション用試験片(裏面側)

キャリブレーションデータから、信号値と減肉率・減肉径に相関関係があることが確認できます。信号値は、減肉率が大きくなるほど、また減肉径が大きくなるにつれて大きくなります。これがファルコンの特性です。減肉率が大きく、つまり残肉厚が薄くなるに従い検出能力が高くなるので、漏洩防止をターゲットにした検査とするならば、ファルコンの能力を大いに発揮できます。また、信号値に相関関係にあるのでデータから、減肉率を評価できるという利点もあります。